子供に伝えたいお金のはなし
日本の義務教育では「お金」について本当に大事なことは何も教えてくれません。
少なくとも戦後は全くお金についての教育がなされていないため、年金世代も今の子どもたちもみな、個人の経済観念のベースとなるものがないまま大人になるのが現状です。
この結果、今の日本は、ファイナンシャルリテラシーにおいて、ほぼ世界最下位層にあると言われています。
人生100年時代を生き抜くためには、「お金にまつわる正しい理解」に子供の頃から触れる機会が必要と考えられます。
「まず、大人がしっかり学び、それを正しく子どもに伝えていく」そうしたサイクルが確立されることで、ファイナンシャルリテラシーが向上していくと期待できます。
目次
1.資本主義を理解する
日本は資本主義国家ですが、「資本主義」について正しく理解していますか。
資本は国家が所有・管理する平等体制をとる社会主義に対し、資本主義では、資本の所有・管理は個人にあり、自由に経済活動を行うことで、利益を追求することができます。
資本とは、プラスのキャッシュフロー(お金の流れ)を生むもの、具体的には、「お金」「不動産」「金」「宝飾品」「絵画」などを指しますが、資本主義とは、これら「資本」に働かせるシステムです。
資本主義社会の日本ですが、どうやらこのシステムを十分に利用できていないようです。
2.お金って何?
では、お金は何のためにあるのでしょうか。
「お金は欲しい物を手に入れるためのもの」は、残念な答えです。
資本主義の経済観念として、
「お金は使うものではなく、お金をさらに増やしてくれるもの」
と答えられたら正解です。
さらに、経済的自由を手に入れるためには、
「労働収入(だけ)ではなく、資産収入を得ることが必要」ということまで、子どもにもしっかり伝えます。
労働収入:働くことによって得られる収入(給与・報酬・事業所得)
資産収入:資産に働かせること(投資)によって得られる収入(配当・利子、不動産など)
「生活費 < 資産収入」の状態をキープすることで、「経済的自由」が手に入ります。
日本の教育では、医者、弁護士、公務員、有名企業などを目指す教育ばかりしてきました。
「偏差値の高い大学に入って、有名企業に就職するか公務員になってくれたら親は安心!」というのが典型的であり、「安定」を好む傾向が強くあります。
しかし、どんなエリートであっても、労働収入では限界のあるお金持ちにしかなれません。
しかも、万が一、病気や事故・災害に遭い仕事ができなくなった期間は、企業勤めでも、名医でも、トップアスリートでも同じで、働かないということは、収入はゼロです。
その点、資産収入があれば、半年入院しても、数ヶ月南の島に旅行をしても、きっちり収入が入ってくるということです。
子どもにこそ、「経済的自由」が手に入る「資産収入が得られるビジネスをしよう!」という夢のある思想を育てることが重要です。
これが、子供の頃に出会いたい超シンプルな「お金」のはなしです。
3.世界の経済教育
日本人に自覚はないでしょうが、実は他国に比べ「年金制度」がものすごく充実しています。
年金制度の整っていない国々では、老後資金は「自分でなんとかするもの」という認識です。
そのため、子どもの頃から、将来のためにお金を増やす「投資」というものを学んでいく必要があります。
老後資金について、「国がある程度まで面倒をみてくれる」というのは素晴らしいシステムである反面、ファイナンシャルリテラシーが育たない理由の一つとも言えます。
お金の教育を受けて育っていたら、「老後2000万円問題」なんという珍事は起こらなかったのではないでしょうか。
「老後2000万円問題」はこちらで解説しています。
それでは、世界の「経済・金融教育」についてみていきましょう。
①イギリス
金融教育の進んでいるイギリスで特徴的なのは、シチズンシップ教育(金融リテラシーを育成するため、金融を含めた経済教育を主に実施している教科)です。
必修科目となった新ナショナル・カリキュラムでは、数学の中に、「金融における利率」「単位価格」などの金融の内容が正式に盛り込まれました。
これにより、生徒が毎日使うお金を管理できるようになり、さらには将来に必要となるお金を計画できるようになることがねらいなのだそうです。
②アメリカ
アメリカでは、1970年代から全国規模での経済教育を展開していて、学校での必須科目という形ではないにしろ、学校での経済教育や金融教育を地域の企業や多くの非営利組織による支援がしっかりしていて、経済教育に触れる機会はとても多いといえます。
シミュレーションゲームなどを使うことで、経済教育において成功している国の一つです。
以下に、アメリカの金融経済教育の推進組織ジャンプスタートが開発した中学生と高校生が理解するべきパーソナルファイナンスについての枠組みを紹介します。
ジャンプスタートではまた、児童、生徒の興味を引くような教材をオンラインで無料提供しています。
「フィナンシャルサッカー」や「株式ゲーム」など、800 以上におよぶオンライン教材が揃っています。
<ジャンプスタート(米国)による金融教育の内容>
収入 | マネー管理 | 支出とクレジット | 貯蓄と投資 |
収入源
収入に影響する要素 起業心 税と政府サービス インフレと購買力 社会保障と医療 企業支援の貯蓄プラン |
ニーズとウオンツ
金融上の意思決定 予算 金融上の責任 保険、リスク管理 金融情報源 ファイナンシャルプランニング 法的文書(遺言等) |
比較購入
機会費用 支払手段 消費者情報 消費者苦情の手続 クレジットコストと記録 クレジット問題(破産等) クレジットと消費者保護法 |
貯蓄や投資の理由
貯蓄、投資商品 リスクとリターン、流動性 複利、時間価値 72の法則、ドルコスト平均法 分散投資 投機と情報源 金融市場の規制 企業支援の貯蓄プラン |
日本では大人も理解していないような充実した内容ですね。
③ドイツ
学校教育に関する権限は基本的に個々の州にあり、学習指導要領も州ごとに作成されるドイツでは、本格的な経済教育は、小学校5年生からが多いようです。
ユニークな取り組みとして、ハンブルグ州他で「生徒の銀行業」というプロジェクトが2005 年にスタートしました。
これは、14 歳から 17・18 歳向けの金融教育プロジェクトで、ハンブルク州の学校の学習指導要領と結びついています。
パズルゲームやロールプレー・ゲームに加わる、インターネトを利用した調査を行う、そして、専門的なセミナーにも参加するといったプログラムの中で、生徒は口座設定、信用リスク、金融商品の種類、年金、預金と貯蓄、学費の予測、公的補助金などの知識を身に付けていく、という面白い事例もあります。
④日本
日本では、2021年度の中学校の新たな学習指導要領で、家庭科において(1)金銭の管理と購入(2)消費者の権利と責任(3)消費生活・環境についての課題と実践などの内容が強化されました。
2022年度から始まる高校の新学習指導要領で、ようやく、家庭科で資産形成について触れ、金融商品、資産形成について(預貯金、民間保険、株式、債券、投資信託等の基本的な金融商品の特徴(メリット、デメリット)、資産形成の視点を教えることになります。
まだまだ「家庭科」に盛り込まれる程度ではありますが、今後「経済」という教科に発展していくことが期待されます。
日本全体のファイナンシャルリテラシーを上げていきましょう。
4.お金の5つの力
画像出典:本当の自由を手に入れる「お金の大学」
人生を豊かにする「お金の5つの力」①貯める ②稼ぐ ③増やす ④守る ⑤使う について理解しましょう。
①貯める(支出を減らす)
貯める力とは、「生活の満足度を下げずに支出を減らす力」です。
支出を見直すという地味な作業ですが、経済的自由を達成するための第一歩なので、軽視せずしっかり行いましょう。
きめては、大きな固定費(通信費、光熱費、保険、家、車、税金)を見直すことです。
「知らないと損するお金の情報掲示板」内でも、固定費の見直しの参考になるページがありますので、是非お読みください。
通信費➡「【2021年5月版】携帯会社の正しい選び方、キャリアごとの違い」
光熱費➡「【2021年版】お得な電気会社の選び方・電気料金の選び方とは?プランや比較方法を解説」
保険➡「医療保険は本当に必要なのか?加入の必要ある?」
「自動車保険を安くする方法①」「自動車保険を安くする方法②」
やった分だけ成果が出るので、がんばりましょう。
②稼ぐ(収入を増やす)
②「稼ぐ」で大事なことは、「転職」や「給与所得+事業所得」で稼ぐ力と貯める力をつけることです。
事業所得は、副業・独立どちらでも構わないので、「自分の力で稼ぐ」経験をすることが大事になってきます。
フリマアプリで不用品を売る、ハンドメイド通販サイトで作品を販売する、スキル販売サイトで仕事を受注する、経験を活かしたティーチングや情報公開など、「これならできる」を見つけてください。
エンターテインメント、癒やし、健康、医療、飲食、音楽、経済、芸術、プログラミングなど、自分の興味あるもの、好きなことの中から、世界の誰かに応援や協力を届けてください。
失敗しても何度でもチャレンジできます。
最初はサラリーマンのまま「スモールビジネス」からでOKです。
また、子どもは、「子ども」であることを最大の武器に、「とにかくやってみる」がしやすい時期でもあります。
今、成功している方の中に、「最初は高校の時に起業しました。たくさん失敗もしましたけど…」と語る方が多いのも事実です。
ここで、
フロー型ビジネス・・即金性、確実性の高い狩猟型ビジネス(プログラミング:システム開発を請け負う)
ストック型ビジネス・・継続性の高い農耕性ビジネス(プログラミング:自作アプリやシステム開発)
の違いを理解してください。
流行りの「せどり※1」や、プログラミング、Webデザイン、Webライティング、デジタルコンテンツ販売、YouTubeなどは、やり方次第でフロー型にもストック型にもなるもので、目的に応じて選ぶことができます。
「死ぬまで現役」をモットーに挑戦を続けましょう。
※1「せどり」・・・安く仕入れて、高く売って利ざやを稼ぐ商売。個人規模の小売ビジネス。
③増やす(資産を増やす)
稼ぐことで収入が増えたら、それを元手に資産を増やしましょう。
投資に対する消極的な意見として、「大損したらどうするの?」「ギャンブルみたいで怖い!」というものがありますが、本当にギャンブル性のあるお金の使い方、利益を得ようとする行為は、「投機」といわれ、投資とは違います。
ここからは、資産所得を増やしていく、働き続けなくても収入が入り続けるようにする話になります。
画像出典:本当の自由を手に入れる「お金の大学」
投資を始める前に・・・
1.「生活防衛費」の準備はできましたか?
会社員なら生活費6ヶ月分、自営業なら1年分の生活防衛費は、急なトラブルや精神安定剤として非常に重要なものです。
準備なしで投資を始めないようにしましょう。
2.利回り(投資した金額に対する利益の割合)の相場を理解していますか?
「ざっくり年5~7%と覚えましょう」
騙される可能性を減らすために、相場を知ることは最も大事なことです。
3.投資商品について理解していますか?
株式・債権・不動産・コモディティ(商品)・預金といった歴史ある資産について理解しましょう。
株式 | 株式会社が個人や他の企業から資金調達するために発行する証券。 株式の値上がりや配当金で利益を得る。 |
債権 (国債・社債・地方債) |
国や地方公共団体、企業などが資金調達のために発行する「借用書」。 債券価格の値上がりや利息によって利益を有る。 |
不動産 (住居・宿泊施設・ テナント・太陽光発電) |
家賃収入や物件の値上がりで利益を得る。 |
コモディティ | 原油などのエネルギー、金・プラチナなどの貴金属・とうもろこし・大豆などの穀物。 値上がりによって利益を得る。 |
預金 | 預金・定期預金の利息で利息を得る。 日本の現在の普通預金の金利は大体は0.001%。 |
4.福利の力を理解していますか?
アインシュタインに「人類最大の発明」と言わしめた長期投資による利息計算が「福利」です。
投資期間が長くなると、資産は福利の力で爆発的に増えます。
ここまでしっかりおさえたら、投資準備完了です。
納得いくまで勉強して金融商品を選びましょう。
「長期分散投資」「インデックスファンド」「ドルコスト平均法」などをキーワードに、書籍やYouTube動画などを参考にしてください。
ここで伝えたい鉄則は1つ、
投資を始める時は、ネット証券で口座を開設しましょう。
決して、銀行や証券会社の窓口には行かないでください。
これだけです。
詳しくはこちらで説明しています。
④守る(貯めた資産を減らさない)
資産を得たら、次は「守る力」の有無が、経済的自由を達成できるかできないかの分かれ道になる大事な部分です。
気が大きくなり、浪費・散財してしまうタイプの人もいます。
「詐欺・ひったくり」や「災害・盗難」に遭ったり、「インフレで削れる」ことがないとは言い切れません。
「自分のかわいいお金は絶対に天敵から堅守する」という強い意思が必要です。
⑤使う(人生を豊かにすることにお金を使う)
「生活費 < 資産所得」になれば、自由な生活が手に入りますが、「自由=幸せ」とは限りません。
自由ゆえの「孤独」「不安」「責任」が襲います。
ここで、「使う力」をいかに上手に使えるかが「幸せに生きられるかどうか」を左右します。
ここまで頑張って貯めたお金に人生を狂わされないために、寄付・プレゼント、心が豊かになる浪費、自己投資、時間を買うといった良いお金の使い方をしましょう。
お金はツールです、上手に使いましょう。
5.お金のイメージを更新する
日本では長い間タブー視されてきた「お金」について、誰でも語れるよう古臭いイメージを更新する時期にきています。
少しだけ、心理学的な見方から「お金」ついて話してみたいと思います。
人間は本能では、お金を持たないよう、持ったら使うようになっているのだそうです。
つまり、意識的にマイナスの本能を塗り替えなくてはいけません。
「お金は汚いもの、お金を持っているのは悪いこと」ではなく、「お金=人を喜ばせた対価」と考えましょう。
また、人から「豊かに見える」ことは、人を説得する(信頼を得る)最善の方法であることも理解しましょう。
潜在意識の書き換えにより、お金に対する不安「どうしよう・・・」は、「どうしたら~できるか?」というポジティブな自己問答に変わります。
冒頭で説明した資本主義のルールを理解していることが「勝ち」なのです。
最強のスキルは、価値を作り上げ、与えるスキルです。
自分の可能性を広げていくためにお金は必要です。
「正しい欲」は、あらゆる原動力になります。
大人のみなさんは、今から「お金は持っていいんだ」と、脳を更新して、子どもたちに楽しい「お金の話」を伝えていきましょう。
学校で教えてくれるその日まで、「子どもへ伝えたいお金のはなし」は身近な大人から伝えてあげてください。
ファイナンシャルリテラシー教育がいかにその国を発展させるか、おわかりいただけましたか。
最後に、お金・経済の知識に、親子で読めるおすすめ書籍を紹介します。
①漫画 バビロン大富豪の教え 「お金」と「幸せ」を生み出す五つの黄金法則 ジョージ・S・クレイソン (著), 坂野旭 (イラスト), 大橋弘祐 |
②改訂版 金持ち父さん 貧乏父さん アメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学 ロバート キヨサキ (著), 白根 美保子 (翻訳) |
③父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え ジェイエル・コリンズ (著), 小野 一郎 (翻訳) |
参考:
本当の自由を手に入れる「お金の大学」/著:両@リベ大学長