銀行が“儲かる”金融商品とは?
老後不安に備え、自助努力による資産形成の意識が高まっています。
効率的にお金を増やすために、何かしら「運用による資産形成を」と考える中で、投資の初心者であれば「まずは銀行に行って相談してみよう」と思いつくかもしれません。
その気持は分かりますが、ちょっと待ってください!
お金を正しく運用したければ、銀行へ行くのはおすすめできません。
勤続30年の銀行員さんは警告しています。
「銀行員から勧められるとおりに投資をしてはいけない!」
一体どういうことなのか、まずはこちらの記事をお読みください。
目次
1.電話勧誘のターゲット
ご自宅に「○○銀行ですが・・・」という明らかに営業をにおわせる電話がかかってきた経験はありませんか。
そうした勧誘電話は、銀行内で決められた一定の条件を満たす人、つまり、勧誘されて投資をする可能性のある、資金に余裕がある人をターゲットにコールしているのだといいます。
そこは銀行さんですから、顧客の預金の動きから、勤務形態、収入、家族構成、車の有無、クレジットカード等の情報、退職金までがお見通しなわけです。
例えば、預金残高が1千万円以上あるとか、その残高が1年以上キープされている人などをターゲットにしているのかもしれません。
2.銀行員のイチオシ商品
当然ですが、銀行員さんが目の前で
「これがおすすめ商品です。お客様の資産形成にはこれがベストです。」
と熱弁してくれたら、信じますよね。
ところが・・・
銀行側が、個人の利益より、銀行(員)にとって収益の高いものを順に勧めているだけだとしたら?
にわかには信じがたいかもしれません。
もちろん、銀行にも理由があります。
日銀の金融政策による低金利と、銀行ビジネスの陳腐化といった要因から、いわゆる利ざやで利益を得る銀行システムは崩壊し、様々な投資商品を売ることで「手数料」という利益を積み上げなければならなくなったのです。
収益悪化が深刻化する銀行としては、苦し紛れの戦法なのでしょうが・・・
これでは、老後の資産形成のために銀行を訪れる顧客の人生はどうなるのでしょうか。
定年層の退職金が出たら投資信託を勧める ➡ 高い手数料を取る
家を買う人などにローンを組ませる ➡ 借金させて金利を儲ける
悲しいかな、こうしたことが日々行われています。
3.銀行にとって収益の高い商品の実体
銀行にとって「収益の高い商品」のキーワードは、「手数料」です。
特に注意すべき商品について説明していきます。
①個人年金(保険)
ここでいう個人年金とは、生命保険会社の商品で、考え方としては生命保険と同じです。
実は、民間の生命保険料の明細は開示されておらず、全くもって不明瞭であり、消費者保護の観点から大問題なのです。
実際の保険額以外(人件費、広告費など)の割合が高いとされ、「手数料○%と明記されない」謎だらけの商品です。
未知なる手数料を払いますか。
これこそが、銀行が欲しい手数料が最も手に入る=「儲かる」商品なのです。
また、元本保証がない商品が多く、一般に、個人年金は10年以上の長期運用が多く、必要な時に使えないこともあり、決して良い商品とはいえません。
まず、「銀行は、お金を運用する場所ではない」と心に決めましょう。
②投資信託
銀行が窓口で取り扱う投資信託は、購入時手数料が2~3%(税抜)、運用管理費用(信託報酬)が1.5%程度かかるものがほとんどです。
投資を続ける限り、運用管理費用はずっと払い続ける必要があるものです。
運用商品を選ぶ時の大原則として、年間に支払う手数料が運用資産額の0.5%を超えるものを避けるようにして正解です。
(この「0.5%」という数字は、つみたてNISAで金融庁が認めたインデックス・ファンドの運用管理費用の上限からきています。)
投資信託の内容云々の前に、手数料でまっとうな商品かどうか判断できてしまうのです。
つまり、銀行窓口で扱っている投資信託は、リスクも手数料も高い「買ってはいけない」商品ばかりといえます。
また、投資信託は長期保有する人に対し、表向き「アフターフォローと」という名で次々と商品を勧め、新たに「手数料」を頂戴しようとうまい話を持ちかけます。
これらは俗に「コロガシ(転がし)」と呼ばれる手法です。
現在は規制も厳しく、短期間の乗り換え(つまりコロガシ)は原則禁止されていますが、こうした情報を知っておくことは自分の資産を守る上で重要なことです。
はい、「銀行は、お金を運用する場所ではない」でしたね。
③外貨預金
外貨預金というと、見た目の金利はたしかに高く魅力的ですが、為替の変動で吹っ飛んでしまう、いわば賭けのような面を持ちます。
そして、上に同じで、手数料が恐ろしく高いものです。
米ドル1ドル120円とすると、手数料は普通の銀行で1ドルにつき1円かかります。
ということは、1万ドル買ったら手数料として1万円余計にかかるということです!
また「仕組預金」などといった高金利を謳った商品も、リスクが大きすぎて、資産運用に適さない「タラレバ」商品です。
もう十分ですね。「銀行は、お金を運用する場所ではない!」
4.手数料とは何ぞや
銀行が儲かる商品①②③とも、手数料が高いということをしつこく述べてきましたが、手数料って一体何なの?と思いますよね。
個人年金が売れれば保険会社から、投資信託が売れれば投信委託会社から、それぞれ販売額の何%かを「手数料」として銀行は得ることができます。
この何%かの利益のために、大きなリスクを背負わされてしまう可能性があるのです。
他の会社の商品を売るなんて、銀行は下請け会社になってしまったのでしょうか。
また、「リスクの高い商品ほど、手数料が高い」という公式があります。
そのため、円貨より外貨、債権投資より株式投資、先進国国債より途上国国債への投資と、より高リスク商品を売りさばきます。
日々ノルマを抱えている銀行員の販促傾向はすべて「手数料」に支配されているというわけです。
「まさか銀行が顧客に損をさせるようなことはないだろう」と、今でも銀行神話を信じる中高年者は少なくありません。
しかし、残念ながら現状はこのとおりです。
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- 銀行員は、お客様本位の営業体制ではないと分かっていて、ノルマのために金融商品を売りつけてしまう。
- 自分自身では投資をしないし、顧客に売りつける投資商品を、自分でも買う銀行員はほとんどいない。
もちろん、自分では購入できない場合もある。 - どんな商品(儲かるor儲からない)でも、手間(顧客への説明、契約、アフターフォローといった一定のプロセス)は一緒だから、儲かる方が良いという考えになりがち。
- 金融商品の勧誘に関するトラブルの根底には、行き過ぎたノルマがある。
銀行の窓口で扱っている運用商品で購入対象にしていいものとして、個人向け国債やつみたてNISAがあります。
「つみたてNISA」については、こちらで詳しく説明しています。
しかし、これらを買おうとすれば、必ずやもっと手数料(=リスク)の高い商品をすすめられてしまいます。
金融商品で運用をすると決めたら、ネット証券会社に口座を作るところから始めましょう。
5.銀行員の経験
冒頭で登場した勤続30年の銀行員さんの経験から
私自身、終身年金保険や投資信託を顧客に売りつける専門業務に任命され、空しさに苛まされた時期がありました。
その当時はノルマに追われ、それこそ顧客の顔など見ずに、売れる商品、儲かる商品を売りつけていました。
現実には目の前にお客様がいて面談しているわけですが、ノルマ第一に考える私にはお客様の顔は見えていなかったのです。
私の勤務する銀行では、ノルマが達成できなくても、いきなりクビになるようなことはありません。
ただし、人事評定では容赦なく査定されます。
ノルマを達成した人間が出世し、そうでない人間は出世が遅れたり、いわゆる左遷の憂き目に遭ったりしていました。
これは、銀行では当たり前のことです。どこの企業でも成果は求められるのは当然ですが、顧客第一とはならない現状に苦しさを感じていました。
出典:銀行員から勧められるとおりに投資をしてはいけない!銀行にとって“儲かる”金融商品とは?
6.サンクコストにこだわらない判断
こちらの記事を読む前に、すでに「銀行員にすすめられるままに運用を開始してしまった」という場合もあるかと思います。
「サンクコスト(埋没費用)」という言葉をご存知でしょうか。
すでに発生してしまって取り返しのつかない費用や損失を指しますが、経済的な意思決定においては、このサンクコストにこだわらずに「これから変えられる損得」に集中しましょう。
②投資信託で出てきた運用管理費用(信託報酬)は、今後も高い手数料を継続的に払い続けることになるので、気がついた時点で即刻解約することが経済的に正解です。
サンクコストを取り戻そうとして、解約を躊躇して遅らせるのは適切な判断ではありません。
「お金の勉強をさせてもらった」と、潔く解約しましょう。
結果的には、サンクコストにこだわらない判断が得だということがわかります。
7.銀行との付き合い方
最後に、お金のビジネスの世直しをすべく、痛快な指摘が評判の山崎元さん(経済評論家で、楽天証券敬愛研究所客員研究員)の言葉を伝えたいと思います。
山崎さんは、3.②に登場した手数料0.5%を超える運用商品を決して相手にしない「0.5%ルール」を提唱している方でもあります。
お金について相談をする相手は、
「自分に商品を売ることで利益を得る人でないこと」
がほぼ絶対的な条件です。
商品を売ることから利益を得る人は、中立なアドバイザーではなく、アドバイザーの仮面を被ったセールスマンだと考えておくことが正解です。
(中略)
「無料相談」だからといって、金融機関に相談に行くのは危険であり不適切です。
また、
どうしても相談したい場合は、商品を販売しない中立性の高いFPに相談料をきちんと払って相談しよう。
別のFPにセカンド・オピニオンを求めることも有効。
出典:「マンガでわかるシンプルで正しいお金の増やし方」著:山崎元
とも述べています。
金融商品を扱うのは銀行だけではありません。
銀行員、証券マン、生保マン、不動産屋、FP(ファイナンシャルプランナー)などは、いわゆる金融の「専門家」と呼ばれます。
銀行ばかりが手数料を狙っているわけではありませんが、金融の専門家の中でも特に警戒すべきなのが銀行員です。
お金の問題は自分で損得を判断するしかありませんし、自分自身以上に「信用できる人」はいないのです。
この記事を読んでもなお、銀行へ行き投資の相談をしてみようと思われるのであれば、銀行員の勧誘にも冷静に対応できるのかもしれません。
しかし、自分の資産を守り、金融商品で失敗したくないと思うのであれば、とにかく銀行へ近づかない、銀行員と関わらないほうがいいでしょう。
そして、顧客の側が正しい知識を持って、ダメな金融商品・サービス、非合理的な意思決定に距離を置くようになることが求められます。
参考:
銀行員から勧められるとおりに投資をしてはいけない!銀行にとって“儲かる”金融商品とは?
「マンガでわかるシンプルで正しいお金の増やし方」著:山崎元