【知っておこう!】国民年金、厚生年金の満額っていくら?
「自分は年金を満額受け取れるのだろうか」「そもそも国民年金と厚生年金の違いって何?」
何気なく年金保険料を支払っているけれど、年金制度についてよく知らない方や、将来どの程度自分の年金として戻ってくるのか疑問に思っている方は多いと思います。
今回は、
・公的年金制度について
・国民年金の満額
・厚生年金の満額
について説明します。
せっかく支払っている保険料ですから、年金制度の仕組みや受け取れる金額を確認しておきましょう。
目次
1.公的年金制度について
公的年金制度は以下の図のように2階建て構造になっており、1階部分の国民年金と2階部分の厚生年金から成り立っています。
①国民年金
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入し、基礎年金の給付を受けることができます。
被保険者は働き方によって分類があり、第1号~第3号に分けられます。
・第1号被保険者
日本国内に住む20歳以上60歳未満の人で、自営業者や学生、無職の人が対象です。
保険料は毎月納付書や口座振替などの方法により基本的に自分で納めますが、免除や猶予制度などもあります。
保険料の金額は一律で、物価や賃金の変動で決まります。
令和3年度の保険料は16,160円となっています。
・第2号被保険者
会社員や公務員など、厚生年金や共済年金の適用を受けている事業所で働いている人が対象です。
保険料の支払いは労使折半となりますが、まず事業主がまとめて支払い、後から従業員の給与やボーナスから負担分を差し引く仕組みになっています。
国民年金保険料は厚生年金保険料に含まれるので、自動的に国民年金に加入することになります。
また、保険料の金額はその人の収入によって異なります。
・第3号被保険者
日本国内に住む20歳以上60歳未満の人で、第2号被保険者の配偶者が対象です。
ただし、年収が130万円以上で健康保険上の扶養とならない場合は第1号被保険者となります。
保険料の支払いは不要で、配偶者が加入する年金制度が負担します。
②厚生年金
厚生年金には会社員など、厚生年金の適用を受けている事業所の従業員が加入します。
加入者は国民年金の第2号被保険者に分類され、国民年金から給付される基礎年金の他に、上乗せ部分である厚生年金を受け取ることができます。
③共済年金
共済(組合)制度は国家公務員や地方公務員、私立学校の教員などとして常時勤務する人が対象となり、国民年金制度の第2号被保険者に分類されます。
共済組合には短期給付と長期給付があり、短期給付は健康保険と同様の給付、長期給付は年金制度と同様の給付を行います。
公的年金には、老齢、障害、死亡の3つのリスクに備える給付があります。
年金と聞くと老齢年金のイメージが強いですが、障害や死亡のリスクも保障する公的な保険なのです。
死亡のリスクに備える遺族年金については、以下の記事で説明していますのでご覧ください。
今回は、公的年金の中でも老齢の給付である老齢基礎年金と老齢厚生年金の満額について説明します。
2.国民年金の満額は?
国民年金から支給される老齢基礎年金は、受給資格期間(※)が10年以上ある人が65歳になると受け取ることができます。
※受給資格期間=保険料納付済期間+保険料免除期間+合算対象期間
では、満額でいくら受け取れるのでしょうか。
その金額と、満額を受け取るための要件を説明します。
①満額はいくら?
老齢基礎年金の満額は、令和3年度は年額780,900円です。
老齢基礎年金の金額は物価や賃金の変動によって毎年変わる仕組みになっており、平成16年以降以下の式で算出しています。
老齢基礎年金額=780,900円×改定率
国民年金制度は昭和36年からスタートしました。
当時の老齢基礎年金の満額は24,000円で、保険料は150円(35歳以下は100円)でした。
令和3年度の老齢基礎年金の満額が780,900円で、保険料が16,160円ですよね。
満額は約33倍なのに対し保険料は約108倍と、保険料の方が老齢基礎年金額より上がり幅が大きいことが分かります。
②満額を受け取るための要件
老齢基礎年金を満額受け取るためには、20歳~60歳の40年間(480月)で、以下の3つのいずれかの要件に該当しなければなりません。
・定められた期間保険料を納めている
・会社員、公務員であった
・第3号被保険者であった
この40年間で免除や滞納があると、その期間分受給額が減額されてしまうので注意が必要です。
しかし、一定の要件はありますが追納(※1)や60歳以降に任意加入(※2)することで満額に近づけることができます。
(※1)追納
保険料の免除や猶予を受けた期間について、10年以内なら後からその期間の保険料を支払うことができます。
ただし、免除または猶予の翌年度から3年度目以降は、当時の保険料+一定額となります。
(※2)任意加入被保険者
国民年金の加入義務はありませんが、以下の人は任意で加入することができます。
・国内に住所がある60歳以上65歳未満の人
・国内に住所がある20歳以上60歳未満の人で、厚生年金から支給される老齢厚生年金を受給できる人
・日本国籍を持ち、国内に住所がない20歳以上65歳未満の人
満額に足りないと分かった時点で、追納や任意加入などの対策を取っておくと将来受け取れる年金額を増やすことができますね。
また、参考までに老齢基礎年金の満額の推移の一部を昭和、平成、令和ごとに表にしました。
<昭和>
年度 | 老齢基礎年金満額 |
昭和36年 | 24,000円 |
昭和48年 | 240,000円 |
昭和51年 | 390,000円 |
昭和55年 | 504,000円 |
<平成>
年度 | 老齢基礎年金満額 |
平成元年 | 666,000円 |
平成6年 | 780,000円 |
平成11年 | 804,200円 |
<令和>
年度 | 老齢基礎年金満額 |
令和元年 | 780,100円 |
令和2年 | 781,700円 |
令和3年 | 780,900円 |
高度経済成長の影響で昭和36年の国民年金制度開始以降、大幅に金額がアップしており平成初期になっても上昇は続いていました。
平成11年に歴代最高額である804,200円となりましたが、以降デフレの影響で少しずつ減少し、近年は約78万円前後で落ち着いています。
3.厚生年金の満額は?
会社員や公務員が上乗せ部分として受け取ることができるのが厚生年金です。
厚生年金から支給される年金には、60歳~64歳までの特別支給の老齢厚生年金(※)と、65歳以降の老齢厚生年金の2つがあります。
※特別支給の老齢厚生年金
特別支給の老齢厚生年金は定額部分と報酬比例部分に分けられます。
支給開始年齢は生年月日によって段階的に引き上げられ、最終的に65歳からの老齢厚生年金のみになります。なお、女性の方が男性より5年遅れで引き上げられます。
どちらも年金も加入期間とその間の平均給与をもとに年金額を計算します。
加入期間が長く、平均給与が多いほど年金額が高くなる仕組みのため、老齢厚生年金には満額という概念は存在しません。
満額という概念は老齢基礎年金にのみあるということになりますね。
4.まとめ
今回は、
・公的年金制度について
・国民年金の満額
・厚生年金の満額
について説明しました。
国民年金から支給される老齢基礎年金の満額は令和3年度時点では780,900円であり、物価や賃金の変動で毎年変わります。
また、免除や滞納があるとその期間分減額されてしまうので、満額を受け取れなくなってしまいます。
ですので、満額に足りないと分かった時点で追納や任意加入などの方法で少しでも満額に近づける対策をとると、将来の年金額を増やすことが可能です。
厚生年金から支給される老齢厚生年金については満額という概念はなく、加入期間とその期間中の平均給与によって金額が決まります。
この違いをしっかりと覚えておきましょう。