【いざという時に!】遺族年金の基本を知っておこう!
「自分にもしものことがあったら家族はどうなるんだろう?」と考えたときに、まず思いつくのが遺族年金ですよね。
遺族年金は内容が難しくて理解できないという方が多いと思います。
また、細かい要件があり年齢・家族構成によって支給額が異なるため複雑な仕組みになっています。
今回は、
・遺族年金とは何か
・死亡が理由で遺族がもらえるお金
・遺族年金の受給手続き
・遺族年金を考えたうえでの民間保険の決め方
以上について解説します。
目次
1.遺族年金とは
遺族年金は、公的年金(国民年金・厚生年金)に加入していた人が亡くなったときに、その遺族がもらえる年金です。
そもそも公的年金とは、老齢、障害、死亡の3つの不安に備える保険です。
公的年金は強制加入を原則としています。
ですので、遺族年金という保険にすでに加入しているという理解のもと、民間保険について考えることが大切です。
公的年金の1つである遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。
以下でそれぞれの内容について説明します。
①遺族基礎年金
遺族基礎年金とは、国民年金に加入していた人が亡くなったときに遺族に支給される年金です。
⑴亡くなった人の要件
遺族基礎年金は、亡くなった人が以下の要件を満たす場合に支給されます。
- 国民年金に加入している
- 国民年金に加入していた人で、日本国内に住所がある60歳以上65歳未満
- 平成29年7月までに老齢基礎年金を受給できるようになった
- 老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある
※受給資格期間=保険料納付済期間+免除期間+合算対象期間
a・bに該当する人は、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が加入期間の2/3以上あることが必要です。
ただし、令和8年4月1日前の場合、死亡日に65歳未満であれば死亡日の前々月までの1年間で保険料の滞納がなければ受けられます。
亡くなった人が未納・滞納をしていると支給されない場合があるので注意しましょう。
⑵受給者の要件
遺族基礎年金を受給できるのは、亡くなった人によって生計を維持されていた以下の人たちです。
・子のある配偶者
・子(18歳到達年度末まで、または20歳未満で障害等級1級・2級の未婚の子)
生計を維持されていたとは、同居していたか仕送りを受けていた、または健康保険の扶養親族であったことをいいます。
受給者の年収が850万円以上または年間所得金額655万5,000円以上の場合は受け取ることができません。
また、子のない配偶者は遺族基礎年金を受け取ることができません。
条件を満たせば寡婦年金や死亡一時金を受け取れる場合がありますが、こちらについては後ほど説明します。
もちろん、子どもが18歳到達年度末(高校卒業程度)を過ぎた場合も受給資格を失います。
⑶年金額
遺族基礎年金の支給額は以下の通りです。
年額780,900円+子の加算(令和3年4月より)
<子の加算>
・第1子、第2子まで…各224,700円
・第3子以降…各74,900円
※なお、配偶者がおらず子が受給する場合の加算は第2子以降について行い、子1人あたりの年金額は上記の年金額を子の数で割った額になります。
例えば、遺族が配偶者と3歳の子1人の場合
780,900円+子の加算224,700円=1,005,600円
つまり、年額約100万円受け取ることができ、受給権が失権するまでの15年間で1500万円もらえることになります。
②遺族厚生年金
遺族厚生年金とは、厚生年金に加入している人が亡くなったときに遺族に支給される年金です。
会社員や公務員は、遺族基礎年金にプラスして受け取れる上乗せ部分となります。
⑴亡くなった人の要件
遺族厚生年金の支給要件には短期要件と長期要件があり、亡くなった人が以下のいずれかを満たす場合に支給されます。
<短期要件>
a厚生年金に加入中に亡くなった
b厚生年金に加入中の傷病がもとで、初診日から5年以内に亡くなった
c障害等級1級または2級の障害厚生年金を受けられる人が亡くなった
<長期要件>
d平成29年7月までに老齢厚生年金を受けられるようになった
e老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある
※受給資格期間=保険料納付済期間+免除期間+合算対象期間
遺族基礎年金と同様に、a・bに該当する人は、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が加入期間の2/3以上あることが必要です。
ただし、令和8年4月1日前の場合、死亡日に65歳未満であれば死亡日の前々月までの1年間で保険料の滞納がなければ受けられます。
⑵受給者の要件
遺族厚生年金を受給できるのは亡くなった人に生計を維持されていた以下の人たちです。
遺族基礎年金より幅広い続柄の人が対象ですが、受給順位や年齢要件があります。
<第一順位>
・妻:夫死亡時に30歳未満で子のない妻の支給期間は5年間
・夫:遺族基礎年金を受給中であり、死亡当時55歳以上(支給開始は60歳~)
・子:18歳到達年度末まで、または20歳未満で障害等級1級・2級の未婚の子
<第二順位>
・父母:死亡当時55歳以上(支給開始は60歳~)
<第三順位>
・孫:18歳到達年度末まで、または20歳未満で障害等級1級・2級の未婚の孫
<第四順位>
・祖父母:死亡当時55歳以上(支給開始は60歳~)
生計維持の考え方や、受給者の年収要件は遺族基礎年金と同様です。
遺族基礎年金との違いは、子ない配偶者も5年間の有期支給ですが受けとることができることです。
また、先の順位の人が遺族厚生年金を受給した場合、後の順位の人は受け取ることができません。
⑶年金額
遺族厚生年金の年金額は、亡くなった人が加入していた厚生年金の期間や、加入中の平均年収の額を使って計算します。
【1】報酬比例部分の年金額(本来水準)
出典:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」
【2】報酬比例部分の年金額(従前額保障)
出典:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」
※原則【1】で計算した金額ですが、【2】で計算した額の方が大きい場合はそちらの額が支給されます。
※計算式にある平均標準報酬月額には賞与は含まれませんが、平均標準報酬額には賞与も含めて計算します。
※厚生年金の加入期間が300か月(25年)に満たない場合でも、加入期間が300か月あるものとして計算します。
このように、遺族厚生年金の計算はとても複雑です。
以下の表は遺族基礎年金+遺族厚生年金の合計額を表していますので、自分の遺族がいくら受け取れるかの参考にしてみてください。
出典:オリックス生命保険株式会社「遺族年金」(2020年度)
⑷中高齢寡婦加算、経過的寡婦加算
遺族厚生年金を受給する妻の場合、条件を満たすと中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算という2つの加算があります。
中高齢寡婦加算は、以下のいずれかの条件を満たすと、遺族厚生年金に年額585,700円が加算される制度です。
・夫の死亡時40歳以上65歳未満の子のない妻
・子があっても40歳以上65歳未満で遺族基礎年金を失権している妻
長期要件に該当する場合は、亡くなった夫の加入期間が20年(240月)以上必要です。
また、妻が65歳以降は妻自身の老齢年金が支給されるため、支給が打ち切られます。
経過的寡婦加算は、中高齢寡婦加算の打ち切りにより年金が減少するのを補うための制度です。
次のいずれかの条件を満たすと、遺族厚生年金に上乗せして支給されます。
・昭和31年4月1日以前生まれで、65歳以降に遺族厚生年金をもらうようになった妻
・昭和31年4月1日以前生まれで、中高齢寡婦加算が適用されていた妻
2.遺族年金以外に死亡が原因で受給できるもの
遺族基礎年金は、子のない配偶者は受け取ることができないと説明しました。
しかし、条件を満たせば寡婦年金や死亡一時金を受け取れる場合があります。
①寡婦年金
寡婦年金とは、亡くなった夫(老齢基礎年金の受給資格期間が10年以上ある)がもらえるはずだった老齢基礎年金の一部が妻に支給される年金です。
妻が60歳~65歳まで間に、夫の第1号被保険者期間をもとに計算した老齢基礎年金額の3/4が支給されます。
寡婦年金を受け取れるのは、夫と10年以上の婚姻期間があり、夫の死亡当時65歳未満であった妻です。事実婚も対象になります。
妻が自分の老齢年金を繰り上げて受給し始めた場合は、寡婦年金は受給できなくなります。
②死亡一時金
死亡一時金は、自営業者だった人が老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取らないまま亡くなった場合に遺族が受け取れる一時金です。
亡くなった人は、国民年金の第1号被保険者として保険料納付済期間(免除期間も含む)が36か月以上あることと、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取ったことがないことが条件となります。
受け取ることができる人は生計を同じくしていた以下の遺族で、生計を維持されていたかどうかは問われません。
1配偶者→2子→3父母→4孫→5祖父母→6兄弟姉妹
一時金の金額は、亡くなった人の保険料納付済期間によって異なります。
保険料納付済期間 | 金額 |
36か月以上180か月未満 | 120,000円 |
180か月以上240か月未満 | 145,000円 |
240か月以上300か月未満 | 170,000円 |
300か月以上360か月未満 | 220,000円 |
360か月以上420か月未満 | 270,000円 |
420か月以上 | 320,000円 |
※1/4免除月は3/4か月、半額免除月は1/2か月、3/4免除月は1/4か月として計算し、全額免除期間は含まれません。
付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、8,500円が加算されます。
また、遺族基礎年金を受け取れる人がいる場合、死亡一時金は支給されません。
寡婦年金と死亡一時金は、どちらか一方しか受け取ることができません。
死亡一時金を受けとれる期限は死亡日の翌日から2年なので、どちらを受け取るべきか考える必要があります。
3.受給手続き
遺族年金は、受け取る遺族が請求手続きをしなければなりません。
手続きの際に必要な書類や提出先について説明します。
①必要書類
遺族年金の請求には、以下の書類が必要です。
・年金請求書
・年金手帳
・戸籍謄本
・世帯全員の住民票の写し
・死亡した人の住民票除票(世帯全員の住民票の写しに含まれる場合は不要)
・請求者の収入が確認できる書類(所得証明書、課税(非課税)証明書、源泉徴収票など)
・子の在学証明書または学生証など(高校生の子がいる場合)
・死亡診断書(死体検案書)のコピー
・受取先金融機関の通帳など(本人名義)
・他の公的年金を受け取っている場合は年金証書
※死亡の原因が交通事故など第三者の行為による場合は別途必要な書類があります。
必要書類は請求する年金の種類や請求先によって異なる場合があります。
提出する前に必ず事前に請求先に確認するようにしましょう。
②手続場所
請求する年金の種類によって手続場所が異なります。
遺族基礎年金:亡くなった人の住所がある市区町村役場
遺族厚生年金:年金事務所または街角の年金相談センター
遺族年金は内容が複雑で、請求手続きも大変かと思います。
確実に年金を受け取ることができるように、事前の準備をしっかり行い、不明な点は請求先に確認するようにしましょう。
4.民間保険の決め方
遺族年金の内容と受け取れる金額を知ったうえで、どのくらいの保障を民間の保険で補えばいいのでしょうか?
例えば、年収400万円の会社員の夫、妻、子どもの3人家族で夫が亡くなった場合の遺族年金の金額は
・子どもが高校生になるまで…月額約13万円
・子どもが高校卒業後…月額約9.5万円
となりますが、これではとても生活できませんよね。
この不足分を民間保険で補わなければなりませんが、
・住居をどうするか
・遺族の人的資本はいくらか
・民間の生命保険額をいくらにするか
という3つの観点から考えると、具体的な金額を想像しやすくなります。
①住居をどうするか
住居は持ち家か賃貸のどちらかが考えられます。
持ち家の場合は、ローンを組む際に団体信用生命保険に加入するはずです。
こちらに加入していると、ローンの契約者が亡くなったり高度障害状態になった場合、ローンの残額を肩代わりしてくれます。
持ち家かつ遺族年金をもらうことができ、貯金がある場合はかなりアドバンテージがありますね。
②遺族の人的資本はいくらか
人的資本とは、稼げる力を指します。
遺族年金を受け取ることができる人は、税制面でかなり優遇されます。
遺族年金は全額非課税で、所得税・住民税ともにかかりません。
非課税となる限度額もなく、他の年金をもらっていても収入があっても遺族年金には税金がかからないようになっています。
また、遺族が自力で働く場合、会社員として働く以外にも内職や自らスモールビジネスを起こして税金の控除や社会保険料を支払わなくて済むようにするという選択肢もあります。
つまり、「人的資本=稼げる力」とは、税金の正しい知識と自力で働くスキルのことです。
その価値を高めるために、今から家族で知識や情報を共有しておくといざというときに安心です。
③民間の生命保険金額はいくらにする?
遺族年金の受給額や現在の貯金額をベースに住居や人的資本という要素を踏まえて、民間保険でいくらプラスするかを考えましょう。
その際に気をつけることは
・自分の「生前レベル」「生前より贅沢な暮らし」を想定した保険金は不要
・遺族が自ら働く前提で考える
・子どもの教育費は最優先にする
ということです。
なぜなら、多額の保険金は遺族の生活を台無しにする可能性があるからです。
ある程度のお金を残すことは必要ですが、遺族が「自分で生きる力」を失わないように配慮することが重要です。
④遺族年金の補填には収入保障保険がおすすめ
最後に、遺族年金のプラスαとしておすすめの保険として、収入保障保険について紹介します。
収入保障保険とは、民間保険の一種で、保険金は基本的に「月額○万円」のような分割で受け取ることができ、保険金額は歳を重ねるごとに段々減っていく仕組みになっています。
必要な保障というのは年々減っていきます。
そのため、保険金額が減っていく仕組みの収入保障保険は理にかなっているといえますし、保険料を抑えることができます。
収入保障保険については以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
5.まとめ
今回は、
・遺族年金とは何か
・死亡が理由で遺族がもらえるお金
・遺族年金の受給手続き
・遺族年金を考えたうえでの民間保険の決め方
について説明しました。
遺族年金のルールを理解し、不足分を民間保険で補うという考え方が大切です。
もしものときは突然やってきます。
遺された家族のためにも、自身が遺族年金について理解し、もしものときにどうしたらいいか家族としっかり話し合っておきましょう。
参考:日本年金機構「遺族年金」