介護保険制度とは

もし、あなたの家族が急に介護が必要になったらどうしますか。

恐らく、多くの方が介護保険制度を利用されると思います。

しかし、介護保険制度ってどういった制度なのか、よくわからない方が多いことでしょう。

そもそも介護保険制度とはいったいどんな制度なのか
サービスを受けられる対象者は誰なのか
申請はどのように行えばいいのか
介護保険で利用できるサービスとは何なのか

今回は、このような疑問に答えます。

1. 介護保険制度について

介護保険制度とは

そもそも介護保険制度とは、いったいどのような制度なのでしょうか。

ここでは、介護保険制度の意味やその仕組みについて説明します。

介護保険制度とは?

介護保険とは、 介護が必要な方(要支援者・要介護者)に介護費用の一部を給付する制度のことを言います。

介護保険の保険者は全国の市区町村で、被保険者はその地域に住んでいる人です。

保険料は、40歳以上の方が納めている介護保険料と税金で支払われています。

給付を受けるには、介護がどの程度必要かを判定してもらい、各市町村や専門機関に手続きをする必要があります。

サービスを受ける場合、基本的に1割自己負担となります。

ただし年収によっては、自己負担率が2割または3割になる場合があります。

介護保険制度の仕組みはどうなっているの?

介護保険制度は、介護が必要となった高齢者とその家族を社会全体で支えていく仕組みになっています。

介護保険はみんなで支えられていると言えるでしょう。

介護保険制度の仕組みには、主に3つの特徴があります。

  • 介護保険の利用者の自立支援を目指すこと
  • 利用者本位のサービス利用(自ら選択してサービスを受けられる)ができること
  • 給付と負担の関係が明確である「社会保険方式」を採用していること

このような仕組みによって、介護保険はまかなわれています。

介護保険サービスの財源はどこ?

介護保険制度の財源は、被保険者が収めている介護保険料税金です。

その内の50%は、被保険者が納めている介護保険料でまかなわれています。

ここでの被保険者とは、日本国内に住所がある人で、以下の条件にあてはまる人です。

  • 第1号被保険者:65歳以上の方
  • 第2号被保険者:40~64歳の方

残りの50%は税金によってまかなわれています。

内訳としては、国が25%、都道府県が12.5%、市町村が12.5%です。

介護サービスを利用する時の費用は、1~3割は自己負担となりますが、残りの7~9割がこの財源によってまかなわれます。

2. 介護保険の対象者

介護保険制度とは

介護保険は誰でも利用できるというわけではありません。

ここでは、介護保険の対象者について紹介します。

介護保険制度が利用できる年齢は?

介護保険制度の対象となるのは、65歳以上の第1号被保険者と、40歳~65歳の第2号被保険者です。

つまり40歳を過ぎると、介護保険料の支払い義務が生じ、介護保険制度を利用することができます。

介護保険サービスを利用するためには?

介護保険のサービスを利用するためには、様々な条件をクリアしなくてはなりません。

介護保険サービスを利用できる条件を、第1号被保険者と第2号被保険者にわけて表にまとめました。

年齢 サービスを利用できる条件
第1号被保険者 65歳以上 要介護要支援状態
第2号被保険者 40~64歳

特定疾病と診断されていること

  • 末期がん
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 後縦靭帯骨化症
  • 骨折を伴う骨粗しょう症
  • 多系統萎縮症
  • 初老期における認知症(アルハイマー病、脳血管性認知症など)
  • 脊髄小脳変性症
  • 脊柱管狭窄症
  • 早老症(ウェルナー症候群など)
  • 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  • 脳血管疾患(脳出血、脳梗塞など)
  • 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 関節リウマチ
  • 慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎など)
  • 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

つまり、65歳以上の方は、要介護状態(認知症などで介護が必要な状態)、要支援状態(日常生活において支援が必要な状態)である場合、介護保険の適用となります。

また65歳未満の方は、末期がんや関節リウマチなどの特定疾病によって要介護・要支援の状態になっている場合、介護保険が適用されます。

3. 介護保険サービスの申請方法 

介護保険制度とは

介護保険料を支払っていれば、誰でもすぐに介護保険制度を利用できるというわけではありません。一定の手続きや申請を行う必要があります。

ここでは、介護保険サービスを利用する際の申請方法について説明します。

①申請する

介護保険のサービスを利用する際は、まず要介護認定を受ける必要があります。

要介護認定とは、対象者がどの程度の介護を必要としているか判定することをいいます。

どのくらい介護サービスを行う必要があるのか、「要支援1」「要支援2」「要介護1」「要介護2」「要介護3」「要介護4」「要介護5」7つのランクに分けて判断します。

要支援1~2「生活機能が低下し、その改善の可能性が高いと見込まれる」状態です。
要介護1~5「現在、介護サービスが必要である」という状態です。

数字が大きくなるほど、より介護度が重くなることを表しています。

申請は、市役所や区役所、あるいは町・村役場で行います。

申請の際には、「介護保険被保険者証」が必要です。

「介護保険被保険者証」は、65歳以上になると自治体から郵送されます。

②訪問調査

介護保険サービスの申請をすると、介護認定調査が行われます。

介護認定調査とは、「本当にその人に介護保険が必要かどうか」「どの程度介護が必要か」を調べることです。

介護認定調査員が直接自宅や施設、病院を訪れて聞き取り調査を行います。

③主治医意見書の提出

認定を進めるのにかかりつけ医による意見書(主治医意見書)が必要となります。

要介護認定は、聞き取り調査と主治医意見書の内容を併せ判定されます。

「主治医意見書」は、申請のタイミングでかかりつけ医に相談して作成してもらうといいでしょう。

④認定・通知

要介護度の審査・判定によって、要介護認定を受けると、通知の知らせが届きます。

この結果は、役所に申請書を出した日から30日以内に郵送で通知されます。

通知書には、介護認定審査会で判定された「要介護状態区分」や「認定有効期間」などの情報が記載されています。

この調査を通して「要支援1以上」と判断されると、介護保険制度を利用できるようになります。

⑤サービスを決める

介護保険では、様々なサービスを利用することができます。

主に居宅サービス地域密着型サービス施設サービスの3つのサービスを利用することができます。

利用者のニーズに合わせて、一番良いサービスを選ぶといいでしょう。

サービスの詳細については、後述します。

⑥ケアプランを作成する

ケアプランとは、介護サービスの利用計画書のことを言います。

介護保険のサービスを利用する場合は、ケアプランを必ず市区町村に提出しなければなりません。

一般的には、ケアマネジャー(介護支援専門員)が、利用者本人・家族と相談しながら作成します。

ただし、ケアマネジャーに頼むことが必須ではありません。

ケアプランは作成したら終わりということではなく、適宜見直されていきます。

⑦サービス利用開始

ケアプランに沿って、介護保険のサービスの利用を開始します。

⑧更新

介護保険サービスの利用には、有効期限があります。

引き続きサービスを利用する場合は、有効期間満了前に更新の申請をする必要があります。

4. 介護保険で利用できるサービスについて

介護保険制度とは

介護保険では、どのようなサービスを受けることができるのでしょうか。

介護保険で利用できるサービスは、居宅サービス地域密着型サービス施設サービスです。

ここでは、介護保険で利用できる3つのサービスについて説明します。

居宅サービス:自宅に住みながら介護を受ける

居宅サービスとは、自宅に住みながら介護を受けるサービスのことです。

居宅サービスにはさまざまな種類があります。

代表的なものとして、訪問サービス通所サービス短期入所サービスがあります。

各サービスの内容は次の通りです。

①訪問サービス
内容
訪問介護
(ホームヘルプサービス)
ホームヘルパーの資格保有者介護福祉士によって、以下のサービスが提供されます。
身体介護(入浴、食事、排泄など)
生活援助(掃除、洗濯、調理など)
・通院のための乗車、降車の介助
訪問入浴介護 浴槽を積んだ入浴車で自宅を訪問し、入浴の介護を行います。
訪問看護 主治医の指示に基づいてサービスを提供します。
病状安定期の利用者の自宅に看護師などが訪問して、療養上の世話診療の補助を行います。
訪問リハビリテーション 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が自宅に訪問し、必要なリハビリテーションを行います。
居宅療養管理指導 医師、歯科医師、薬剤師、歯科衛生士、管理栄養士が自宅を訪問し、療養上の管理・指導を行います。

 

②通所サービス
内容
通所介護
(デイサービス)
利用者が施設などに通い、日常生活上の支援(食事の介護・入浴など)、機能訓練、レクリエーションを行います。
通所リハビリテーション
(デイケア)
病状安定の利用者が医療機関介護老人保健施設などに通い、日常生活上の支援(食事の介護・入浴など)、リハビリテーションを行います。

 

③短期入所サービス
内容
短期入所生活介護
短期入所療養介護
(ショートステイ)
介護老人福祉施設・介護老人保健施設・病院・診療所に、短期間入所するサービスです。
普段は自宅で生活する高齢者が期間を決めて利用します。

 

地域密着型サービス:住み慣れた地域で介護を受ける

地域密着型サービスとは、介護が必要になった状態でも、できる限り住み慣れた地域で生活を続けていけるように支援するサービスのことです。

そのため、住んでいる市町村のサービスしか受けることができません。

地域密着型サービスの一例は以下の通りです。

内容
特定施設入居者生活介護 有料老人ホームや軽費老人ホームなどに入居している利用者が対象で、日常生活上の支援、機能訓練、療養上の世話を行います。
福祉用具貸与 日常生活の自立を助けるための福祉用具を貸与します。
特定福祉用具販売 入浴や排泄などに使用する福祉用具の購入費7~9割分が支給されます。※購入費は1年につき最大10万円
住宅改修 改修費(最大20万円)の7~9割が支給されます。
手すりの取り付けや段差解消などの住宅改修をした場合

 

施設サービス:施設に入って介護を受ける

施設サービスとは、「介護保険施設」へ入居して介護を受けるサービスのことです。

「介護保険施設」とは、自治体などの公的機関が運営する介護施設のことで、以下の4つの施設があります。

①特別養護老人ホーム
介護3以上の方が入居できる施設です。
全て医療保険でまかなわれており、どこよりも低価格で利用できます。

②介護老人保健施設
専門スタッフによる医療ケアやリハビリなどを通じて、要介護高齢者が宅復帰することを目的とした施設です。

③介護療養型医療施設
手厚いリハビリや医療ケアを受けることができる施設です。
2023年度で廃止になることが決まっています。移行先は介護医療院です。

④介護医療院
長期療養のための医療機能を基本に、生活施設の機能(介護)を備えている施設です。
2018年度に新たに創設された施設で、現在、介護療養型医療施設からの移行が行われています。