児童福祉について
「千の蔵より子は宝」ということわざがあるように、子供は何よりも大切な存在です。
そんな子供たちのための「児童福祉」をご存知ですか?
様々なサービスが提供されており、児童手当もその一つです。
ここでは児童福祉とは何か、どのようなサービスがあるのか詳しく見ていきましょう。
目次
1. 児童福祉とは
児童福祉は、児童福祉法に基づいて様々な行政機関や施設などが行う福祉サービスのことです。
また、児童福祉は社会福祉制度の中の一つとして位置付けられています。
児童福祉法
児童福祉法では、以下を理念としています。
第1条 すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。
2 すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。
引用:厚生労働省HP
つまり、どの児童も一定の水準以上の生活ができ、全ての大人は児童が健やかに成長できるように努力しなければならないということですね。
親だけではなく、あらゆる大人が子供を大切に守り、育てなければならないということです。
これらの考え方は、昨今問題として取り上げられている「児童虐待」にも繋がります。
社会福祉制度
こちらは社会的弱者と呼ばれる、児童・母子・心身障害者・高齢者など、社会生活を送る上でハンディキャップを負った人々に対して、公的な支援を行う制度のことです。
支援を必要とする社会的弱者が安心して生活が送れるように支援するとともに、貧困を生まない、救済する機能も果たしています。
2. 児童福祉サービス
ここからは具体的なサービスについて見ていきましょう。大きく分けて5種類のサービスがあります。
- 保育所
- 児童に関する手当
- 児童相談所
- 地域における児童の健全育成・養護を必要とする児童の自立支援
- 子ども・子育てビジョン
2-1. 保育所
こちらは働くママ・パパにとって一番身近なサービスではないでしょうか。
保育所は、親の就労や病気などのやむを得ない事情で家庭保育ができない乳幼児を保護者に代わって保育することを目的にしている、児童福祉法に基づく児童福祉施設の一つです。
対象は0歳〜小学校に入学する前の児童となっています。
保育所に入所するためには、事業主体である市町村に申請を行い、審査・手続き・調整が行われた後に運営主体である保育所に子供をあずけて保育サービスを受けることになります。
ここで一つ大きなポイントとなるのが保育料。
保育料は児童の年齢と保護者の所得から算出されます。国が基準額を示していますが、多くの市町村が保護者の負担を軽減するために国の基準より軽減した額の保育料を設定しています。
そのため、自分が住んでいる地域によって保育料は変わります。詳細な保育料については各自治体のHPなどをご参照ください。
幼児教育・保育の無償化
令和元年10月1日から実施されている「幼児教育・保育の無償化」。子育て世代にはとても嬉しい制度です。
こちらの制度ですが、いつから無償になるのか、いくらまで、どこまで無償になるのか、詳しく見ていきましょう。
対象は3〜5歳ですが、住民税非課税世帯は0〜2歳も対象に含まれます。
ここで注意しなければいけないのが、保育所に通う子供の場合、3歳になった時点から無償になるわけではないということです。
満3歳になった後の4月1日から保育料が無料になります。
また、認可外施設や一時預かり事業、病児保育事業、ファミリー・サポート・センター事業では3〜5歳は月額3.7万円、0〜2歳(住民税非課税世帯のみ)は月額4.2万円までが無償です。
子ども・子育て支援新制度の対象とならない幼稚園は、月額2.57万円までが無償となります。
そしてもう一つ忘れてはならないのが、通園送迎費、食材料費、行事費等は無償の対象ではないということです。
ただし、食材料費は年収360万円未満相当世帯と全世帯の第3子以降は副食(おかず・おやつ等)の費用が免除されます。
参考:内閣府HP
2-2. 児童に関する手当
先ほどご紹介した「幼児教育・保育の無償化」も児童に関する手当の一つですが、他にも受け取れる手当があります。
児童手当
こちらは、子供の義務教育が終わる15歳になるまで受け取れる手当です。
支給額は年齢によって異なります。
※児童を養育している方の所得が所得制限限度額以上の場合は、特例給付として月額一律5,000円を支給。
※「第3子以降」とは、高校卒業まで(18歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の養育している児童のうち、3番目以降をいいます。
引用:内閣府HP
こちらの手当ですが、毎月振り込まれるわけではありません。毎年6月、10月、2月に、それぞれの前月分までの手当が支給されます。
例えば、2歳の子供がいる家庭の場合、6月に支給される手当は60,000円となります。
児童手当制度では、下記のようなルールが適応されています。
- 原則として、児童が日本国内に住んでいる場合に支給します(留学のために海外に住んでいて一定の要件を満たす場合は支給対象になります)。
- 父母が離婚協議中などにより別居している場合は、児童と同居している方に優先的に支給します。
- 父母が海外に住んでいる場合、その父母が、日本国内で児童を養育している方を指定すれば、その方(父母指定者)に支給します。
- 児童を養育している未成年後見人がいる場合は、その未成年後見人に支給します。
- 児童が施設に入所している場合や里親などに委託されている場合は、原則として、その施設の設置者や里親などに支給します。
引用:内閣府HP
一番注意しなければならないのは、1の日本に住んでいる場合のみに支給されるという点です。子供が留学している間は受け取ることができませんので注意してください。
こちらの児童手当は認定請求、すなわち申請をしなければもらえません。
子供が生まれたり、他の市町村から転入した時は現住所の市町村に認定請求書を提出する必要があります(公務員の場合は勤務先)。
認定されれば、原則として申請した翌月分から支給されます。
ここで最も大切なポイントです。こちらの制度には15日特例というものがあります。
これは出生日や転入した日(異動日)が月末に近い場合、申請日が翌月になっても異動日の翌日から15日以内であれば、申請月分から支給してくれるというものです。
申請が遅れると、遅れた分の手当は受けられなくなりますので、子供が生まれた時、引っ越しをした時は早めに申請をしましょう。
また継続して手当を受ける場合、現況届の提出が必要です。こちらは毎年6月1日に状況を把握し、基準を満たしているか確認するためのものです。
現状届が提出されないと手当を受けることができなくなりますので、必ず提出してください。
さらに下記に該当する場合、市区町村に届出が必要となります。
- 児童を養育しなくなったことなどにより、支給対象となる児童がいなくなったとき
- 同じ市区町村の中で住所が変わったとき、または養育している児童の住所が変わったとき
- 受給者の方または養育している児童の名前が変わったとき
- 国内で児童を養育している者として、海外に住んでいる父母から「父母指定者」の指定を受けるとき
引用:内閣府HP
申請や届出は忘れず、早めに出しましょう。
高等学校等就学支援金制度
高校無償化とも呼ばれる制度です。高等学校など教育にかかる経済的負担を軽減を図り、全ての人が均等に教育の機会を得られるようにするという目的でこの制度が制定されました。
公立高校の授業料無償化として始まったこの制度ですが、2020年の4月、7月に大きな変化がありました。
一つは私立高校も実質無償化になったということ。もう一つは所得要件に対する見直しが行われたということです。
現在の制度での受給資格や支給額がどのようになっているのか、順番に見ていきましょう。
受給資格は二つの項目があります。まず一つ目は国内に在住し、高等学校等に在籍していること。もう一つは所得です。
所得は「保護者等の課税標準額(課税所得額)×6%」ー「市町村民税の調整控除額」< 30万4,200円 の世帯が対象となります。
家族構成や共働きかどうか、などで所得の目安が変わります。
引用:文部科学省HP
支給額は高校の種類や世帯所得額によって異なります。
公立高校の場合、全日制は9,900円/月、定時制は2,700円/月、通信制は520円/月。
私立高校では、全日制・定時制・通信制ともに9,900円/月が支給されます。加えて、 世帯所得や通う学校種により加算支給される場合があります。
引用:文部科学省HP
こちらの制度も受給するには申請が必要です。原則、入学時の4月に以下の必要な書類を学校等に提出しなければなりません。
- 受給資格認定申請書(学校を通じて配布される)
- マイナンバーカードの写しなど
引用:文部科学省HP
忘れないように、受給資格認定申請書が届いたら早めに記入して提出しましょう。
2-3. 児童相談所
こちらは児童福祉法に基づいて設置された、児童福祉の第一線の機関です。都道府県、指定都市に設置が義務付けられています。
児童相談所は寄せられた相談に応じながら「子供の権利」を守り、子ども達や家族にとって最善の方法と思われる処遇を行っています。
児童福祉司、心理判定員、一時保護職員、精神科・小児科医師などの専門職員がおり、それらの専門職員がチームを組み、相談に対応します。
相談の種類は大きく①養護相談、②障害相談、③非行相談、④育成相談、⑤その他の相談に分けることができます。
近年増加している児童虐待事案に関する相談は、①の養護相談に当てはまります。また、いじめに関する相談も①〜⑤の一環として行われています。
2-4. 地域における児童の健全育成・養護を必要とする児童の自立支援
言葉だけ聞くと非常に難しいように思いますが、多くのご家庭がこちらの福祉サービスを受けています。
こども会や親の会といった地域の組織活動の支援や、児童館といった遊び場の提供、さらに放課後児童クラブといった事業が含まれています。
ほかにも、保護者がいない、いても保護者が養育できない・させることが適切でないなどの理由で家庭での養育が困難な子どもに関しては、乳児院や児童養護施設が整備されています。
このような場合、里親家庭などへの委託も行われます。
非行児童については児童自立支援施設、情緒障害児については情緒障害児短期治療施設が整備されており、各々の子どもが健全な育成を図れるようになっています。
2-5. 子ども・子育てビジョン
こちらは平成22年1月に閣議決定された、社会全体で子育てをしていく、子育てを支えていくというものです。
少子化対策として色々な対策が行われてきましたが、子どもを産みたい・育てたいと思える国を作ること、子育てがしやすいと思える社会を作るという風に着目点が転換されました。
基本的な考え方は「社会全体で子育てを支える」、「希望が叶えられる」という二つです。
ここで挙げられている施策の中には、妊娠・出産・子育てに関してだけではなく、男性・女性ともに仕事と生活の調和が取れる、ライフ・ワーク・バランスの実現も打ち出されています。
参考:内閣府資料
まとめ
児童福祉は、私たちの生活・子どもたちの生活をよりよくするためのサービスです。
特に児童手当など、支給されるものは申請が必要となります。せっかく受けられるサービスがあるのに、申請を忘れていた・遅れたせいでサービスを十分受けられないというのは非常にもったいないです。
どのようなサービスがあるのか、その対象になるのか、申請に必要な書類や期限についてしっかり知識を身につけておきましょう。
参考:知るぽると