事業承継の考え方

日本で深刻な問題となっている少子高齢化
少子高齢化の影響は、経済や社会保障制度への影響など、大きな社会問題となっています。

中でも、中小企業経営者の頭を悩ませている、事業承継の問題はご存じですか?

後継者が見つからないまま、経営者の高齢化が進んでしまっている企業が多くなっているのです。

従来は親族に承継することが一般的でしたが、少子化により後継者がいないことも多く、現経営者の引退とともに廃業する企業も多く存在しています。

長年培った技術やノウハウ、従業員などの雇用を守るためにも、事業承継は早めの対策がとても重要です。

今回は「後継者候補がいない」「計画の立て方がかわからない」など、不安を抱えている中小企業経営者の方向けに、事業承継の具体的な考え方や取り組み方法について解説していきます。

1.事業承継の考え方

中小企業庁の「中小企業の事業承継に関するアンケート調査」によると、中小企業の平均引退年齢は、現在小規模企業で70歳、中規模企業で67歳となっています。

下の図は2018年までのデータになりますが、年々70歳以上の経営者が増えていっていることがわかります。

引用元:中小企業庁

試算だと2025年頃までに、平均引退年齢の70歳を超える経営者が、全国で245万人に達すると言われており、その半数が後継者未定となっています。

この試算通りにいけば、650万人の雇用と22兆円のGDPが失われるとも言われ、事業承継問題は会社と従業員の雇用だけでなく、社会全体に与える影響も大きい問題なのです。

 

また、後継者となる相続人がいる場合でも、自社株や不動産、税金などといった承継時にトラブルの元になりやすい問題もあり、事前の計画や対策がとても重要になります。

事業承継は、従業員や会社に与える影響が大きく、経営者の身内だけの問題ではありません。

現経営者が突然引退したり、急死したりなどもあり得るので、現経営者が高齢になる前に対策することが必要です。

2.事業承継で重要な3つのポイント

①人の承継

事業承継で最も重要なことは、後継者がいるかどうかです。

親族内に後継者候補がいることがベストですが、現状だと親族内承継が実現できているのは全体の40%くらいと言われています。

また、後継者候補が必ずしもすぐに経営者になれるわけではありません。

 

経営者としての育成に長い時間が掛かることや、経営者として適正であるかなどの判断も必要になります。

後継者の経営力が、今後の事業展開を左右することはもちろん、取引先や従業員への影響も大きく、経営者としての人材育成は重要な問題です。

 

親族内承継ができない場合は、従業員や外部人材などから後継者候補を選定することになります。

経営者としての力量があるかや、従業員など組織から合意を得られるか、利害関係者から理解が得られるか等の問題もあります。

②資産の承継

最も大きな課題は、自社株式の承継です。

後継者候補が経営者として、承継時に経営権を確保できるかが重要になります。

安定的な経営をするためには、2/3以上の株式を承継することが理想になりますが、そのための資金や税金の問題があり、計画的な取り組みが必要です。

 

また、親族内承継の場合、会社の株式以外にも個人資産の相続の問題もあります。

会社の資金繰りや設備や不動産など、将来の事業の進め方により、資産の承継の仕方を検討する必要があります。

③経営資産の承継

会社の強みとなる目に見えない経営資源の承継です。

  • 会社や社長の信頼、業界での信用
  • 経営方針
  • 優良な取引先や仕入れ先など
  • 金融機関などの信頼関係
  • 長年積み重ねた技術やノウハウ

3.事業承継の対策方法

事業承継の考え方や必要性は理解できても、実際に事業承継をするには、具体的にどのようなことをしたらよいのでしょうか。

ここからは、事業承継をする前にできる対策について解説していきます。

①会社の状況や資産を把握する

事業承継するにあたり、将来に向けての経営方針を定める必要があります。
そのためにも、会社の現状を把握することが重要です。

事業、資産、財務についてなど、すべてを見える化することによって、次のようなメリットがあります。

  • 事業の将来性の分析や会社の体質の確認・・・今後取り組むべき課題が洗いだせる。
  • 経営者の個人資産などの確認・・・経営資源が明確になり、後継者の不安の解消になる。
  • 客観的な財務状況を明らかにする・・・銀行や取引先からの信用度があがる。

事業をこれからも維持、成長させていくためにも、会社の現状や資産を把握することはとても大切になります。

②後継者の選定

後継者の選定方法には3つのパターンがあります。

  • 親族内承継
  • 従業員などの親族外承継
  • M&A

※M&Aとは、事業承継の有効な手法で、主に株式譲渡を意味しています。他の会社へ引き継ぐことにより、それまで培った技術やノウハウ、雇用が守られ、会社を維持することができます。

それぞれ承継時には、次のようなメリット・デメリットがあります。

メリット デメリット
親族内承継 ・早い段階から後継者育成を進められる。
・経営方針を承継しやすい。
・承継の意思がないケースがある。
・相続人が複数の場合トラブルになりやすい。
・早期に事業承継対策を進める必要がある。
親族外承継 ・会社の状況などをよく理解している人に承継できる。
・親族内承継よりも選べる人材が多い。
・後継者候補に資産力がない場合に承継できない。
・社内で反発されるケースがある。
M&A ・広範囲から適性のある人材を選べる。
・後継者の育成が必要ない。
・後継者の資産力を気にしなくてよい。
・従来からの経営方針などを承継しにくい。
・後継者との交渉が必要。
・経営者の個人保証や担保の引継ぎに注意が必要。

③事業承継計画書の作成

事業承継の具体的なスケジュールを書面化したもので、事業承継の際には必要不可欠となります。

会社の現状の見える化によって明らかになった経営上の課題を解消しながら、現経営者と後継者とが策定します。

会社の将来の目標や経営方針を、中長期的な計画を前提に議論していき、次のような項目を決めていきます。

  • 事業承継の基本方針
  • 経営者交代の時期
  • 後継者育成計画
  • 経営者として引き継ぐべきこと
  • 株式の移動方法等
  • 従業員や利害関係者との信頼関係構築方法など

後継者が、いつ経営者になるのかがわかれば、それまでに経営者として取り組まなければならない経験や知識が見えてくるので、
後継者の育成計画も立てやすくなりますね。

 

事業承継計画書を作成しておくメリットは他にもあります。

  • 後継者に次期経営者としての意識を与える
  • 幹部や従業員が後継者だと認めやすくなる
  • 取引先などの利害関係者への信頼関係につながる

事業承継は、後継者からは言い出しにくいもの。
いつ会社を後継者に引き継がせるかは、現経営者の意思決定になるので、現経営者から言い出さないと始まりません

株式の移動のためにも具体的な取り組みを事前に計画しておくことによって、スムーズに実行に移すことが可能です。

中小企業庁のホームページでは、事業承継に関するガイドラインや、以下のような事業承継計画書の作成例などを見ることができるので、参考にすると良いでしょう。

引用元:中小企業庁

4.まとめ

事業承継の考え方についてお話してきました。

【事業承継を考える際のポイント】

  • 人の承継
  • 資産の承継
  • 経営資産の承継

【事業承継の対策方法】

  • 会社の現状を把握する
  • 後継者候補を選ぶ
  • 事業承継計画書を作成する

一般的には親族内から後継者を選びますが、少子高齢化などの理由で、従業員などの親族外やM&A等から選定したり、見つからない場合は廃業する企業も増えてきています。

事業承継は、経営者の身内だけの問題ではなく、会社や従業員にも大きな影響を与えます。

現経営者が高齢になる前の早い段階から、事業承継計画書を作成し準備を進めることがとても大切です。