【生前から準備しておこう!】相続税の基本を知る

家族や親族が亡くなって遺産を引き継ぐときも、税金を払わなくてはいけません。
これを相続税と言います。

しかし、家族・親族が亡くなったからといって、必ず自分が遺産を引き継ぐ(相続)というわけではありません。

引き継ぐ人(相続人)は、初めからある程度決まっています。
また、財産の分け方にも決まりがあります。

遺産を引き継ぐからといって、全ての財産に相続税がかかるわけでもありません。
財産の評価方法も遺産によって違います。

このように、相続税にはややこしい決まりが多くあります。

今回は、相続税とは何なのか相続人の順位と範囲相続税のかかる財産相続財産の評価方法についてまとめました。

1. 相続税と相続人について

相続税とはどのような税金を指すのでしょうか?

ここでは、相続税について説明します。

①相続税とは?

相続とは、ある人が亡くなったとき、その人の財産(金銭や不動産だけでなく、債務や権利・義務を含む)を配偶者や子どもなどが引き継ぐことを言います。

民法では、ある人が亡くなったときから相続が開始されることになっています。
亡くなった人被相続人財産を引き継ぐ人相続人といいます。

相続税とは、被相続人が亡くなったとき、相続財産を相続人に渡す際にかかる税金のことを指します。
相続税は遺産の金額が大きいときにかかる税金で、金額に応じた相続税率が適用されます。

日本の国内に住所がある相続人は、相続財産がどこにあっても、すべての財産に対する相続税を支払わなければなりません。

国内に住所がない相続人は、相続した財産のうち、日本国内にある財産だけ相続税を支払わなくてはなりません。

また、日本に居住している在留資格者の場合、相続税がかかるのは日本国内にある財産だけとなります。

なお、国外の財産を相続によって取得した個人が日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に相続人又は被相続人が日本国内に住所を有していた場合は、相続税の納税義務者に該当します。

②相続人は誰になるの?

民法での相続人の範囲と順位は以下の通りです。

第1順位 配偶者、直系卑属(子どもや孫)
第2順位 配偶者、直系尊属(親や祖父母)
※直系尊属に養父母(養子縁組をした法律上の父母)は含まれるが、継父母(実際の父母ではなく養子縁組もしていないが同一世帯の父母)は含まれない
第3順位 配偶者、兄弟姉妹
※兄弟姉妹が既に死亡している場合には、その子ども(甥姪)に限り代襲相続が認められる。

被相続人の配偶者は、常に相続人となります。
ただし、正式な婚姻関係が必要のため内縁の妻には相続権はありません。

配偶者以外では、まず子どもが相続人となります。
子どもがいない場合には、被相続人の親子どもも親もいない場合には兄弟姉妹が相続人となります。

子どもが既に死亡している場合は、その子ども(被相続人にとっては孫)が相続人となります。

民法上、養子にも実子と同じ相続権があります。
しかし、他に実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までと制限されています。

胎児は既に生まれたものとみなされ相続人となりますが、死んで生まれたときは適用されません。

2. 相続財産の分け方

相続財産はどのように分けるのでしょうか。

相続財産の分け方について説明します。

①相続財産の分け方

遺言書があって相続分を指定している場合には、その指定に従います。

遺言書がない場合や、遺言書があっても遺産の一部しか指定していない場合には、相続人全員の話合いで分け方を決めます。遺産分割協議

遺言書は、満15歳になると書くことができます。
しかし、遺言書があっても一定の方式に従ったものでないと法律上無効となる場合もあります。

②遺言書がない場合の相続財産の分け方

遺言書がなく他に同順位の法定相続人がいない(被相続人に子も親も兄弟姉妹もいない)場合は、被相続人の配偶者は相続財産の全部を受け取ることになります。

遺言書がなく法定相続人が複数いる場合は、それぞれの相続分について以下のように定められています。

第1順位 配偶者2分の1、直系卑属2分の1
第2順位 配偶者3分の2、直系尊属3分の1
第3順位 配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1

 子や親、兄弟姉妹が2人以上いる場合は、それぞれ均等に分けます。

孫や甥、姪(代襲相続人)の相続分は、自分の親が相続するはずであった相続分を、法定相続分に従って分けます。

ただし、これはあくまで一つの基準としてあるだけで、相続人が話し合って自由に分け方を決めてもよいとされています。

3. 相続税のかかる財産とかからない財産

相続税は、被相続人が亡くなって財産を相続人に相続するときにかかる税金です。

しかし、全ての財産に相続税がかかるわけではありません。

ここでは、相続税のかかる財産とかからない財産について説明します。

①相続税のかかる財産

相続税のかかる財産は以下の通りです。

  • 金銭に見積もることができるもの預貯金、貸付金、有価証券、不動産、貴金属、著作権など)
  • 被相続人から相続開始前3年以内の贈与により取得した財産
  • 相続時精算課税制度の適用を受ける贈与財産
  • みなし相続財産

    みなし相続財産とは?
    遺産分割協議の対象ではないものの、相続税の計算の対象となる財産。
    ・被相続人が保険料を負担していた生命保険均や損害保険金
    ・被相続人の死亡を原因として支払われる退職手当金など

    ②相続税のかからない財産

相続税がかからない財産は以下の通りです。

墓地、墓石、仏壇、仏具、神棚など
ただし、金の仏像などを骨董品として持っていた場合は相続税がかかります。

 

弔慰金、花輪代など
金額が世間一般の常識的な範囲内であれば、相続税はかかりません。

世間一般の常識的な範囲
業務上の死亡の場合:普通給与の3年分
業務上の死亡でない場合:普通給与の半年分
※この場合の普通給与とは、被相続人の死亡時における賞与以外の給与をいいます。

 

生命保険金、退職手当金
生命保険金や退職金は相続財産とみなされますが、それぞれ一定の金額までは相続税がかかりません。

生命保険金、退職金の非課税限度額の計算式
生命保険金、退職金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数

 

事故などの損害賠償金
交通事故や飛行機事故で被害者(被相続人)が死亡した場合は、生命保険金や損害保険金のほかに損害賠償金が支払われます。

この場合の損害賠償金のうち、遺族の精神的な苦痛に対する慰謝料としての賠償金には、相続税も所得税もかかりません。

 

国や地方公共団体などへ寄附した財産
国、地方公共団体、特定の公益法人、認定NPO法人等に寄附した財産については、相続税はかかりません。

特定の公益法人への寄附については、以下のような制限が設けられています。
ー既に設立されている公益法人への寄附に限ること
ー寄附を受けた公益法人は、その財産を2年以内に公益事業に使うこと
ーその寄附によって寄附をした人やその親族の税金が不当に安くならないこと

4. 相続財産の評価方法

相続財産の評価は、相続税の計算の基礎となります。

財産の種類により、以下のように細かく定められています。

預貯金
相続開始の日の残高に、その日に解約した場合に支払われる利息から源泉所得税を控除した金額を加えて評価します。

 

上場株式
相続開始の日の終値、その月の毎日の終値の平均、前月の毎日の終値の平均、前々月の終値の平均のうち、一番低い価額で評価します。

 

上場されていない会社の株式
その株式を発行した会社を大会社・中会社・小会社という規模に従って分類し、その株式を取得した人がその会社の同族株主であるかどうかによって、①配当還元方式、②類似業種比準方式、③純資産価額方式のほか、④上記②と③の併用方式など、それぞれ異なった方法で評価します。

 

家屋
固定資産税評価額で評価します。

固定資産税評価額は、3年ごとに改定されます。
固定資産税評価額を知りたい場合は、建物の所在地の市町村役場(東京都の場合は都税事務所)で調べればいいでしょう。

アパートや貸家の場合には、借家権の割合を減額して計算します。
(固定資産税評価額×借家権割合×賃貸割合)

 

土地
土地は原則として、宅地、農地など土地の用途による区分(地目)ごとに評価します。
土地の評価には、登記簿謄本のほか間口・奥行の分かる公図が必要です。

 

宅地
市街地の大部分で使われる路線価方式は、その土地の面している道路に1平方メートル当たりの評価額が付けられており、面積にこの評価額を掛けて計算します。

しかし、同じ道路に面していても、間口の狭い土地や、角地・崖地・袋地などの土地は、その事情に応じて特別の計算をします。

郊外地で使われる倍率方式は、固定資産税評価額に地域ごとに定められている倍率を掛けて計算します。

 

借地権
借りた土地に建物を建て、地代を払って利用している場合には、まず通常の方法で土地を評価し、その価額に借地権割合を掛けて計算します。

この借地権割合も地域によって異なります。

 

貸宅地
借地権を設定した後、地主に残っている底地の価額は、その宅地の価額から借地権の価額を控除して計算します。

 

貸家建付地
土地に貸家を建てて貸している場合には、下記のように借家人の権利として計算される金額を控除して評価します。

貸家建付地の評価の計算式
貸家建付地の評価=自用地の評価額-(自用地の評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

 

農地
純農地と中間農地は固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて計算します。
市街地農地は宅地並みに評価した価額から造成費を控除します。
また、市街地周辺農地は原則として市街地農地の80%で評価します。

 

路線価、倍率、借地権割合
その年の路線価や倍率、借地権割合などは、毎年8月に全国の税務署で公表されます。
国税庁のホームページにある「路線価図等閲覧コーナー」で全国の路線価図を見ることができます。

 

ゴルフ会員権
原則として通常の取引価額の70%で評価します。

 

書画・骨董など
売買実例のあるものはその取引価額、その他のものは精通者の意見などを参考に評価します。